38歳サラリーマンの直樹さん。最近、不動産鑑定士という資格を知り、興味をもっています。悩み多き社会人や受験生にいつも適確なアドバイスをくれる天狗先生が、不動産鑑定士の仕事の魅力について丁寧に詳しく教えてくれます。
「人生100年時代。これからの長い人生を考えると、今よりも専門性の高い仕事がしたいなぁ。。。家族のことを考えると安定した収入も必要になる。不動産鑑定士をとって専門性を高めたいんだ。」
「国家三大資格なのにあまり知られていない資格が不動産鑑定士なんだ。直樹さんよく知っているね。」
「国家三大資格に合格するなんてちょっとハードル高くて不安なんだけれど、不動産鑑定士をとって専門性の高い仕事がしたい。天狗先生、今日は不動産鑑定士について詳しく知りたいんだ。」
「不動産鑑定士は、キャリアアップや就職転職の切り札にもなるから、社会人になってから目指す人がほとんど。だから合格者の平均年齢も30代~40代が多いんだ。しかも不動産鑑定士試験は、3年間かけて計画的に受験できるので、忙しい社会人でも安心して目指せる、とても魅力的な資格なんだ。」
1.担うフィールドは無限大!?不動産鑑定士の3つの仕事
不動産鑑定士は不動産関連の最高峰に位置する資格。全国でわずか8000人しかいない希少価値の高い資格といわれています。弁護士・公認会計士と並ぶ国家三代資格のひとつです。不動産鑑定士は、理論に基づく公平中立な立場で、国から認められた独占業務である「不動産の鑑定評価」を行うことが仕事です。
国土の狭い日本だからこそ、土地や建物などの「不動産」は大変貴重な財産であり、その「不動産」の価値を判断できる不動産鑑定士は、高度な専門性を必要とする非常にやりがいのある資格といえます。
「不動産の鑑定評価」は、国や都道府県、市区町村などが土地の適正な価格を公示するための評価業務(公的評価)や不動産売買を前提としない業務が多くあり、これらは景気の影響を直接受けません。そのため、不動産鑑定士は、景気に左右されない安定した職業です。近年、不動産鑑定士を取り巻く環境も多様化しており、高まる不動産鑑定士の需要拡大とともに、国土交通省も、不動産鑑定士を増やすため、試験問題の見直しや試験結果通知内容の充実、PR動画コンテストの実施など、さまざまな取り組みを強化しています。
「不動産鑑定士の仕事である『不動産の鑑定評価』は、不動産の経済価値を金銭に見積もる行為全般のことをいうんだよ。」
「不動産の経済価値を金銭に見積もるなんて、たくさんの知識がないと難しいよなぁ。。。」
「そう、だから国から認められた『不動産鑑定士』だけが、独占業務としてこの仕事ができるんだよ。」
「幅広いたくさんの知識が必要になってくるから、試験がとても難しいんだね。。。でも、不動産鑑定士の需要が拡大していて、国土交通省サイドから合格者を増やす努力をしてくれているなんて、まさに渡りに船だね!」
(1)宅建士と不動産鑑定士の違いは?
不動産系資格において、資格的にも仕事的にも相乗効果が高いため、度々並んで比較される機会の多い両資格ですが、実際に担う仕事内容は異なります。
宅建士は、土地や建物の取引の仲介を行うことが仕事ですが、不動産鑑定士が行う「不動産の鑑定評価」は、国から認められた独占業務であり、公平・中立な立場から、地理的状況や法規制、市場経済などさまざまな要因をふまえて、理論に裏づけられた不動産の価格を求める仕事です。不動産鑑定士としての仕事の成果物は「不動産鑑定評価書」です。高度な専門性を必要とするやりがいのある資格、それが不動産鑑定士です。
(2)不動産鑑定士の主な3つの仕事とは?
不動産鑑定士の行う「鑑定評価業務」には、「公的評価」と「民間評価」「コンサルティング業務」があります。
【1.公的評価】
依頼主は国や都道府県、市区町村などです。国内の地域・区画ごとに定められた標準的な地価や、土地にかかる税額を決めるために行われる鑑定評価のことです。主な仕事として、「地価公示※」「都道府県地価調査」「相続税標準地の鑑定評価(相続税路線価)※」「固定資産税標準宅地の鑑定評価※」などがあります。
いずれも国や都道府県など、公的機関からの定期的な依頼となるため、安定した収入源となります。そのため、独立開業のしやすさにもつながっています。
不動産鑑定士の「公的評価」は、他の資格にはあまり見られない魅力のひとつです。また、地方であるほど公的評価の割合が多く、全体の7~8割が公共機関からの依頼であるといわれています。
※地価公示/国土交通省が、毎年1月1日時点における全国の標準地の正常な価格を、3月に公示(公的機関が一般の人に公表すること)します。
※相続税路線価/国税庁が7月に公表する一定の距離を持つ「路線」に対して付けられる価格のことです。毎年1月1日時点における相続税や贈与税を算定する際の基準となります。
※固定資産税評価/固定資産税や不動産取得税の基準となる評価額のことです。3年に一度だけ行われ、当該年度は不動産鑑定士の年収アップにも影響すると言われています。
【2.民間評価】
依頼主は企業や個人です。主に金融機関やデベロッパー、一部の上場企業などが依頼主です。「不動産鑑定」を行うのは主に、不動産を売買するとき(不動産売買)、不動産を貸し借りするとき(賃貸)、不動産を相続・贈与するとき、不動産を担保にするとき(担保)があります。また、M&A(企業買収)に関わるものや不動産を証券化※する際の資産評価などがあげられます。
※不動産の証券化/不動産に見込める収益や、将来の適正な売却価格を知るために行う鑑定評価を言います。所有する不動産の資産価値(賃料収入や売却益)を裏付けとして証券(株式や社債)を発行し、不特定多数の投資家から資金調達を行えるようにする仕組みのことです。
「不動産鑑定士の『公的評価』は、国や都道府県から定期的に依頼される仕事なので、不動産鑑定士が景気に左右されない安定した職業だと言われる理由のひとつなんだよ。公的評価の担当不動産鑑定士になれれば、安定した収入源を確保できるので、独立開業もしやすいんだよ。」
「よく『銀座の土地があがった』や『3年連続土地価格上昇』とかって、春先の新聞報道で発表されているのがまさに公的評価なんだよね?不動産鑑定士って責任が伴うすごい資格なんだね。」
「そう、ただ公的評価は、地域によって業務量が大きく異なるよ。地方では、その事務所の業務の7~8割、都市部では2割程度とも言われているよ。特に、都市部で独立開業するなら、将来性・やりがいといった点からも、民間評価の仕事割合を増やしていく方がおすすめなんだよ。」
「なるほど、確かにそうだね。私も、企業や個人を相手に、海外不動産を扱うグローバルな仕事がしてみたいな。。。」
さらに、不動産鑑定士の行う仕事のもうひとつの柱として「コンサルティング業務」があります。
【3.コンサルティング業務】
対象となる不動産を、さまざまな角度から調査・分析し、その結果をふまえて、顧客のニーズに合わせた的確なアドバイスを行います。不動産のプロとして、時代のニーズにあった独自のビジネスモデルを構築することもでき、とても創造的で将来性のある業務です。
近年では、国内に限らず海外の不動産まで業務対象を広げており、グローバルに活躍する不動産鑑定士が増えています。主な業務例として、「マンションの建て替え時のコンサルティング」「CRE戦略(企業が所有している不動産の有効活用の提案)」などがあげられます。CRE戦略の具体例としては、企業が所有している福利厚生施設をリノベーションして、誰でも利用できる宿泊施設として開放し、宿泊費としての収入を得るなどがあります。
不動産鑑定士の魅力・仕事・働き方をみる(LEC不動産鑑定士情報サイト)≫
★仕事の魅力アンケート~不動産鑑定士受験生・合格者の声~
Q.不動産鑑定士の仕事の魅力はなんですか?
※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:不動産鑑定士受験生・合格者)
不動産鑑定士の仕事では、「専門性がある」が全体の33%を占める結果となりました。
不動産鑑定士という資格の魅力はやはり、「不動産鑑定士にしかできない仕事」があるという点であり、幅広い知識と多角的な視点をもつ不動産鑑定士の最大のステータスであるといえます。
また第2位の「男女・年齢に関係なく正当に評価される(21%)」や第3位の「責任ある仕事ができる(18%)」など、国家・企業の経済活動へも貢献する不動産鑑定士ならではの魅力なのではないでしょうか。
2.高まる不動産鑑定士の需要と活躍の場 (3つの働き方)
不動産鑑定士は、不動産業界はもちろん、金融・コンサルティングや官公庁など、さまざまなフィールドで活躍しています。
自分に合ったさまざまな働き方を選択できる不動産鑑定士は、社会人のキャリアアップや就職転職の切り札にもなるなど、高まる不動産鑑定士の需要とともに、その活躍の場は広がっています。
独立開業、不動産鑑定事務所勤務、企業内鑑定士の割合は、都市部ではおよそ3:6:1程度と言われています。地方では独立開業の割合が高くなるなど、地域によって異なります。
(1)独立開業
不動産鑑定士は安定した収入源となる「公的評価」があるうえ、パソコンだけあればすぐに開業できるため、独立開業しやすい資格といわれています。その他、業務拡大が可能な「コンサルティング業務」や他士業との共同事務所を設立するなど、総合的に個人・企業の要望に応えることができ、担うフィールドは無限大です。
(2)不動産鑑定事務所勤務
独立開業と同じく、不動産鑑定事務所での仕事となりますが、独立開業するのではなく、専門事務所として、個人や法人、国や自治体などからの依頼で不動産鑑定を行います。事務所の規模は、個人から数百名まで多岐にわたります。
(3)企業内鑑定士(インハウス)
一般企業に所属し、鑑定評価部門において鑑定評価等の業務を行うことや、不動産鑑定の知見を活用して他部門で活躍できます。その他、CRE戦略(企業が所有している不動産の有効活用の提案)など、不動産鑑定士の需要は幅広い分野に広がっています。
【仲介会社や建設会社など不動産業、コンサルティング会社】
活躍の場:鑑定部門、不動産関連の企画や開発、管理といった部門など
・土地・建物の売買や賃貸のための価値評価
・マンション再開発プロジェクトや大規模な土地開発のためのコンサルティング
・賃貸住宅やビルの経営、買替えにかかる不動産有効活用や投資採算分析といった不動産運用のコンサルティング
【信託銀行、証券会社・保険会社・損保会社などの金融機関】
活躍の場:銀行の担保評価部門や信託部門
・金融機関から融資を受けるための担保物件の鑑定評価
・不動産の運用・有効活用に関する相談
【鉄道会社】
活躍の場:用地管理部署
・鉄道という公共・公益事業の性質上、自社での鉄道用地の評価など
【官公庁】
・外部に依頼した鑑定評価書の内部チェックなど
不動産鑑定士の魅力・仕事・働き方をみる(LEC不動産鑑定士情報サイト)≫
「企業内鑑定士の一例として、東京渋谷のヒカリエや大阪のあべのハルカスなどがあるよ。つまり企業内鑑定士が、鉄道会社内で不動産の有効活用を考えた結果として建てられたのが、こうした商業施設になるんだよ。」
「コンサルティングやCRE戦略はどんな仕事なの?」
「企業内鑑定士(インハウス)とは逆で、コンサルティング業務は、企業に対して、外部からアドバイスを行う不動産鑑定士の仕事だよ。それに対してCRE戦略は、内部外部を含めて広く企業が所有する不動産の有効活用を考えていく不動産鑑定士の仕事になるよ。」
「不動産鑑定士の仕事は、フィールドが本当に幅広いんだね。自分に合ったさまざまな働き方を選択できるし、アプローチ方法が自由で幅広いところも魅力的だね。将来的には独立開業を視野に入れつつ、最初はさまざまな経験や勉強も兼ねて、不動産鑑定評価の事例が多岐に渡る、不動産鑑定事務所で働くのがベストかもね。」
3.仕事のやりがいとは?女性にもおすすめ?
(1)高度な専門職業家である
不動産の鑑定評価は、不動産鑑定士にしか行うことができない国から認められた独占業務です。理論に基づく公平中立な立場で、対象となる不動産の利用価値や経済価値を把握して、それを金額で表すことのできる唯一の国家資格です。
不動産にまつわる法律・経済・会計の全ての知識がなければ行うことができない、高度な専門性を必要とする仕事で、表現力・文章力・論理力などでも高度な水準を要求される資格です。そのため、幅広い知識をもとに多角的な視点が必要となります。プライドを持って仕事ができることが、やりがいへつながります。
(2)国家・企業の経済活動に貢献できる
不動産鑑定士が行う不動産の鑑定評価によって、国土交通省や国税庁が公表する地価を求めたり、不動産の有効活用の提案や企業におけるCRE戦略など、経済活動の源である不動産の価値を金額で表すことで、国家・企業の経済活動に陰ながら大きく貢献しているのです。
普段はあまり目にすることの少ない不動産鑑定士ですが、高額なビルを評価して大きな自信となったなど、大きなものを支えている感覚が、やりがいへつながるようです。
(3)自由なライフデザインを描ける(自分に合ったさまざまな働き方を選択できる)
不動産鑑定士としての活躍の場や働き方はさまざまです。不動産鑑定士としての仕事の成果物となる「不動産鑑定評価書」を作成し提出することが、仕事の成果です。そのため、自身の生活に合った働き方を選択できます。
不動産鑑定士は独立開業しやすい資格だと言われているとおり、パソコンがあれば自宅でもできる請負業務です。そのため、女性でも育児との両立ができ、男性でも介護をしながら仕事ができるなど、ライフバランスに非常に優れた資格です。このように、在宅ワーク中心の働き方も可能です。
また不動産鑑定士は、フィールドワークの割合が高いのも特徴です。ひと月の半分が出張ということもあります。全国津々浦々・全世界に出張できる楽しみや、街の歴史や文化を学ぶことができる喜びがあります。また多彩なバックグラウンドをもつ人と会い、たくさんの世界を見聞できることも、不動産鑑定士としての魅力のひとつです。このように、フィールドワークの高い働き方も可能です。
「不動産鑑定士の論文式試験科目が、民法・経済学・会計学・鑑定評価理論と多岐に渡っている理由は、不動産にまつわる法律・経済・会計の全ての知識がなければ行うことができない、高度な専門性を必要とする仕事だからなんだよ。」
「プライドとやりがいのある仕事なんだね。」
「しかも、ライフワークバランスが求められている昨今、男女関係なく、育児や介護などと仕事をうまく両立できる不動産鑑定士は、知る人ぞ知る、とても魅力的な資格なんだ。独立開業費用も多くはかからず、自宅でパソコンがあれば仕事ができるしね。」
「不動産鑑定士の成果物は『不動産鑑定評価書』だけというところがかっこいいよね!私は旅行・温泉・歴史探索が趣味なので、全国津々浦々に仕事で出張できるなんてテンションあがるわ!何だか自分が不動産鑑定士に向いている気がしてきたよ。」
★ライフスタイルアンケート~不動産鑑定士受験生・合格者の声~
Q.不動産鑑定士のライフスタイルにおける魅力はなんですか?
※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:不動産鑑定士受験生・合格者)
不動産鑑定士の魅力として、やはり根強い人気なのが「独立・開業ができる」となり、全体の31%を占めていました。また、第2位は「生涯現役で働ける」で27%という結果となりました。
不動産鑑定士の定年は70歳だといわれていますが、人生100年時代といわれる今、高度な専門職業家として生涯現役で国家・企業の経済活動に貢献できる不動産鑑定士は、誰もが求める目指すべき将来像なのではないでしょうか。
4.不動産鑑定士に向いている人は?
フィールドワークもデスクワークも好きな人?
不動産鑑定士の仕事である「不動産の鑑定評価」は、フィールドワークとデスクワークが半々だと言われています。
フィールドワークは、鑑定評価の対象となる物件自体の現地調査+役所などでの資料や情報収集などが主です。デスクワークでは、調査した不動産の状況をまとめ、それに基づいて鑑定評価を行い、それを書面にまとめる作業です。
不動産鑑定士に向いている人は、以下のような人があげられます。いずれも、論理的な思考力と的確な表現力が必要だといわれています。
- 高い専門性を身につけたい人
- 社会に貢献したい人
- デスクワークもフィールドワークも好きな人
- 論理的に物事を考えられる人
- 細かい仕事ができる人
★向いている人アンケート~不動産鑑定士受験生・合格者の声~
Q.不動産鑑定士に向いている人はどんな人だと思いますか?
- バランス感覚のある人(40代 男性 公務員)
- 洞察力がある人(50代 女性 アルバイト)
- 幅広い見識を持った人(50代 男性 会社員)
- 真面目にコツコツ努力する人(30代後半 女性 会社員)
- 数字に強く、正義感がある人(30代前半 男性 会社員)
- マジメ、人当たりが良い、社会的責任感が強い人(30代前半 男性 会社員)
- 信用を特に大事にする人(50代 男性 会社員)
「不動産鑑定士の仕事は、担うフィールドが非常に大きいため、幅広い知識と多角的な視点が必要なんだ。また職業柄、他の士業を含め、国や都道府県、企業や個人など、接する相手も多岐に渡るため、『バランス感覚』の優れた人に向いている資格だといわれているよ。」
5.かなり気になる、不動産鑑定士の年収は?
収入と安定感のバランスがよい?
厚生労働省の平成29年賃金構造基本統計調査によると、不動産鑑定士の平均年収は48歳(平均年齢)で778万円となっています。
不動産鑑定士には「公的評価」があるため、安定した収入を確保しやすいという魅力があります。また、3年に1度行われる固定資産税評価のある年は、平均年収が上がる傾向にあります。
◆不動産鑑定士(男) /49.8歳/勤続年数19.4年の場合
年収:823万6900円[給与額:51万5100円、年間賞与:205万5700円]
◆不動産鑑定士(女)/26.5歳/勤続年数0.5年の場合
年収:240万1200円[給与額:20万100円、年間賞与:0円]
◆不動産鑑定士(男女計)/48歳/勤続年数17.9年の場合
年収:777万7400円[給与額:49万300円、年間賞与:189万3800円]
[厚生労働省「平成29年 賃金構造基本統計調査」より]
「不動産鑑定士は『公的評価』をはじめ、『鑑定評価』そのものが景気の影響を受けないため、年収は比較的安定しているんだよ。要するに、収入と安定感のバランスがとても良い資格なんだ。」
「でも、合格したら実務修習があるから、初期投資費用がかかるんだよね?」
「不動産鑑定事務所に実務修習生として勤めている1年~2年間は、最も給与が低いとされていて、この期間中だけは辛抱が必要なんだ。ただ、不動産鑑定事務所に実務修習生として勤務することは、独立開業を見据えた不動産鑑定士の場合、将来ライバルになる相手に実務を教えてくれるんだから、必要不可欠でありがたい話なんだよ。また、全国で2ヵ所程度と決して多くはないけども、指定大学機関でも実務修習を受けることができるよ。受講料はおよそ70万円前後かな。」
「指定大学機関でも受講できるなら、その方が効率的じゃないかな?」
「ただし、指定大学機関での実務修習は、実際に実務を経験できる訳ではないので、机上の空論となってしまうデメリットもあるよ。そのため、実地演習で貴重な体験ができるなど、独立開業など将来を見据えた場面では、不動産鑑定事務所での実務修習をおすすめするよ。ちなみに、不動産鑑定事務所での実務修習は0円~100万円前後と事務所によって幅があるよ。」
実際に、不動産鑑定士試験合格を目指す受験生にも、気になる資格手当や年収について、聞いてみました。
★年収・資格手当アンケート~不動産鑑定士受験生・合格者の声~
Q不動産鑑定士資格を取得をした場合、所得UPは見込めますか?または手当て等はつきますか?
※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:不動産鑑定士受験生・合格者)
Q不動産鑑定士になったら、理想としてはどのくらいの年収を目指したいですか?
※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:不動産鑑定士受験生・合格者)
「平均年収が48歳で778万円かぁ。。。仕事も比較的安定しているみたいだし、独立開業も十分可能みたいだし、本当に魅力的な資格だなぁ…」
「アンケート調査結果によると、理想として目指したい年収で最も多いのが500万円~650万円まで(31%)となっているね。不動産鑑定士を目指す受験生や合格者は、比較的堅実な人が多いんだね。やっぱり不動産鑑定士という資格の魅力は、年収アップだけではなく、高い専門性を身につけて、プライドとやりがいをもって社会貢献したいなどだから、意識が非常に高い人が多いのかもしれないね。ある意味、不動産鑑定士資格の魅力を十分に理解している方が、この資格を目指しているんだと思うよ。」
「仕事はプライドをもってやりたいよね。不動産鑑定士にしかできない仕事かぁ。。。憧れるなぁ。」
6.不動産鑑定士の将来性は拡がっているの?
国土交通省も鑑定士増対策!高まる不動産鑑定士の需要とは?
近年、不動産鑑定士を取り巻く環境が多様化してきており、従来までの「不動産鑑定評価」だけでなく、「環境評価」や「機械設備評価」などの業務も出てきています。
環境評価とは?
環境汚染や地球温暖化に対する関心が高まるなか、不動産の利活用等に関して、土壌汚染・アスベスト・PCBなどの環境リスクや、省エネルギー・環境負荷の低減など、環境配慮を総合的にマネジメントすることをいいます。
機械設備評価とは?
不動産以外の動産や特殊な不動産であるインフラ施設について、適正な時価把握の必要性が高まるなか、従来まで帳簿価格での価値把握が主体であった動産は、金融機関、監査法人、税務当局等による審査が厳格化するなか、時価での価値把握が必須となりつつあります。このような状況を背景に、多様化する時価評価・価格調査ニーズに対応すべく、動産やインフラ施設、工場財団や鉄道財団などの多種多彩な各種評価・調査を行うことをいいます。
また、IFRS(国際財務報告基準)※1 関連の企業会計やデューデリジェンス※2 、信託業務※3 など、不動産鑑定士が活躍できるフィールドはさらに大きく拡大しています。
さらに、公的評価が主流となる地方の民間評価の需要を開拓することもできます。また、他士業から業務の依頼がくることも多く、不動産鑑定士としてのアプローチ方法は自由です。不動産鑑定士は、業務上も試験科目上も、多くの他士業との相性がとても良いです。
例えば、税理士とタイアップして、不動産取引における税務調査や相続税対策を行ったり、弁護士とタイアップして、不動産に関する法律相談や訴訟業務を行ったり、司法書士とタイアップして、不動産の権利登記と同時に適正な価格を判断したりなどがあげられます。
近年、国内に限らず海外の不動産まで業務対象を広げており、グローバルに活躍する不動産鑑定士が増えています。こうした高まる不動産鑑定士の需要拡大とともに、国土交通省も不動産鑑定士を増やすため、学生など若年層や不動産分野での職務経験のない方にもチャレンジしてもらい、短期合格ができるように、2016年度より試験問題の見直しを行うなど、さまざまな取り組みを強化しています。これに伴い、知識量よりも基礎を重視した試験問題となっていることから、誰にでも目指しやすい資格となっています。[平成27年6月26日 国土交通省「不動産鑑定士試験 規定等/不動産鑑定士試験実施の改善について」より]
※1:IFRS(イファース、国際財務報告基準)/International Financial Reporting Standardsの略で、国際財務報告基準を指します。これにより企業の所有する不動産の時価評価を行う仕事が増えています。
※2:デューデリジェンス/資産運用を行うためにその不動産が投資に向いているか判断する材料を作る仕事のこと
※3:信託業務/融資を行う上で担保となる不動産の価値を客観的に判断する仕事のこと
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「不動産鑑定士は、多くの他士業との相性がとても良いのも、魅力のひとつだよ。税理士、公認会計士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、マンション管理士、宅建士など、さまざまな士業と連携して仕事を行うことで、業務の幅をさらに拡大することができるよ。また、不動産鑑定士自身が自分の強みとなる専門分野をもつことで、他の不動産鑑定士との差別化を図ることも可能だよ。」
「ほとんど全ての士業と連携をして仕事ができるんだね。不動産鑑定士が、『バランス感覚の優れた人に向いている』といわれる意味がわかる気がするなぁ。。。」
「多彩なバックグラウンドをもつ人と会い、たくさんの世界を見聞できることも、不動産鑑定士の魅力のひとつだね。また、地方の民間評価の需要を開拓して、地元に貢献したりもできるので、本人次第でとてもやりがいを感じられる仕事なんだよ。」
「まさに、不動産鑑定士の担えるフィールドは無限大なんだね!何だか夢がどんどん広がるなぁ。。。国土交通省も不動産鑑定士を増やすための取り組みを強化してくれているみたいだし、そんな環境なら私でも合格できるかも…不動産の適正な価格を判断できる唯一の国家資格、私も勉強をはじめてみようかな!」
「従来までは、不動産鑑定士というと、手が届かない難関資格というイメージだったけれど、ちゃんと頑張れば、合格が決して夢ではない資格に変わってきたよね。」
まとめ
不動産鑑定士の「仕事や将来性」「活躍の場」「魅力」「年収」「向いている人」などについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
「人生100年時代」や「働き方改革」が掲げられている今、ワークライフバランスに優れた不動産鑑定士という仕事は、国土交通省の鑑定士増対策も追い風となり、今後もさらにニーズが高まっていくことは間違いありません。
ぜひ、人生の選択肢を広げる意味でも、「不動産鑑定士」を目指してみてはいかがでしょうか。
<登場人物紹介>
天狗先生:いつの間にか山奥からおりてきて、悩み多き社会人や受験生にいつも的確なアドバイスをくれる人。神秘的で気高く頼りになる見た目と、田舎の祖父を思い出す温かい印象から、みんなは彼を先生と呼んでいる。ちなみに、体が赤いのはお酒を呑んでいるのではなく、熱過ぎるハートのせいなんだとか。
直樹さん:経済学部卒。38歳で妻子ありのサラリーマン。40歳の人生折り返し時点にさしかかり、自分にしかできないグローバルな仕事がしてみたいと考えはじめた。昔から学習意欲がわりと高く真面目で向上心があるタイプ。家族のことを考え年収アップも見据えている。