【秘書検定】「秘書検定」「秘書検」と略されることが多いですが、正式名称は「秘書技能検定試験」。公益財団法人 実務技能検定協会が主催している公的資格です。3級・2級・準1級・1級の4つの級があり、第116回(平成30年11月11日)の試験では、全体の受験者46,289名のうち、2級の受験者が58.8%でした。つまり、秘書検定は、2級がずば抜けて人気といえます。
秘書検定という名前から、「秘書になりたい人が取る資格かな?」と思ってしまいそうですが、実は多くの人は、秘書を目指して秘書検定を取得しているわけではありません。前述の試験では4万人以上が受験し、試験は年3回(準1級・1級は年2回)。と考えると、相当な人数が受験しており、また、全体の受験者の7割以上が大学生をはじめとした学生です。
では、なぜそんなに多くの人が、そして学生が、秘書検定を受験しているのでしょうか。
1.秘書検定とは、どんな資格?
◆秘書検定は【すべての社会人】に役立つ資格
秘書検定は、もちろん秘書を志して取得する人もいるのですが、多くの人はそうではありません。「秘書」というとみなさん、どんなイメージを持っているでしょうか。
- 電話やメール、来客の応対をする
- 事務や雑務もこなす
- スケジュール管理や調整がうまい
- 一般常識やマナー、立ち振る舞いが完璧
- 臨機応変な対応力がある
たとえばこんな点があると思います。
秘書検定とは、今挙げたような応対・言葉遣いや、話し方、マナーや一般常識などが、一定の水準を越えているかを測る試験です。……あれ?でもこれって、よくよく考えると、社会人であれば誰もが持っておきたいスキルではないですか?
そうです。秘書検定は、こうした社会人としての基礎力やビジネスマナーを身につけるための試験ですので、秘書だけに限らず、すべての社会人に役立つ資格です。
(謎の人)「もちろん、こうしたマナーや知識などは就職活動においても役に立つし、入社前から身につけておけば、入社後も、他の新入社員より一歩リードできる。だから、大学生などの学生にも非常に人気な資格なんだよ。」
◆試験方式・試験内容・合否の基準は?
秘書検定は、年齢・性別・学歴・国籍などの受験資格や制限は設けられていません。誰でも、3級~1級のどの級からでも受験できます。また、内容としては、どの級も「社会人としての常識やビジネスマナー」に関する問題が出題されますが、試験方式は、級によって異なります。
「以前は秘書検定1級の取得には、英検などの指定された資格を併せて取得する必要があったけど、今(2019年現在)はそういった条件はないよ。」
<試験方式>
級ごとの試験方式は下記の通りで、3級と2級・2級と準1級はそれぞれ併願受験が可能です。
3級 | 選択問題31問・記述問題4問(120分) |
2級 | 選択問題31問・記述問題4問(120分) |
準1級 | 選択問題14問・記述問題9問(130分) 二次試験(面接試験)あり/3人1組(10分) |
1級 | 記述問題17問(140分) 二次試験(面接試験)あり/2人1組(10分) |
※選択問題はマークシート方式
※準1級・1級は、筆記試験に合格した方のみ二次試験へと進めます。また、二次試験で不合格になった場合、受験した回の2つ後(2月試験は含めない)の試験まで、筆記試験が免除されます。
<試験内容>
▼筆記試験 ・・・いずれの級も下記の理論・実技の問題が出題されます。
- 理論:必要とされる資質/職務知識/一般知識
- 実技:マナー・待遇/技能
▼面接試験 ・・・級により、それぞれ下記の課題が出題されます。
- 準1級:あいさつ/報告/状況対応
- 1級:報告/応対
<合否の基準>
どの級も、「理論」「実技」それぞれ60%以上で合格です。気になる配点ですが、実は具体的には公表されていません。そのため、問題数で考えたときに、少なくとも6割以上は正解しておきたいところです。
ただし、特に記述問題については、配点が一定でなく、選択問題よりも配点が多い可能性も考えられますので注意が必要です。記述問題は、パーフェクトな答えでなくても、部分点がもらえる場合もありますので、自信がなくても、なるべく諦めずに解答しておきましょう。
◆試験日程・試験会場・受験料は?
<試験日程・スケジュール>
▼試験日・申込期間
基本的には、2月・6月・11月の年3回。多少前後することもありますが、毎年、おおよそ下記の時期に試験が実施されます。
※2月は3級・2級のみ
- 2月上旬 (申込期間:12月上旬~1月中旬)
- 6月中旬 (申込期間:4月上旬~5月中旬)
- 11月中旬 (申込期間:9月上旬~10月中旬)
申込方法は、インターネット申込・書店申込・郵送申込のいずれかを選べます。書類を記入したり取り寄せたり……と、いろいろな手間を考えると、インターネット申込が一番手軽でおすすめです。
▼合格発表日
- 筆記試験:試験日から約3週間後に、秘書検定の公式Webサイトと郵送でそれぞれ合否を通知。(ただし、二次試験(面接試験)がある関係から、準1級は3・2級よりも少し早く合否が公開され、1級は希望した面接試験の日程により公開日が異なります。)
- 面接試験:試験日から約1ヵ月後に送付。
<試験会場>
筆記試験は、全国各地の100ブロック近くの地域で実施。(2019年時点)
基本的にはどの都道府県でも受験でき、近くの会場がないという心配はありません。
ただし、注意したい点として、準1級・1級の二次試験(面接試験)については、一部の大きな都市でしか実施されません。また、二次試験は日程も受験地によって違うので、必ず事前にチェックしておきましょう。
<受験料>
- 1級:6,500円
- 準1級:5,300円
- 2級:4,100円
- 3級:2,800円
※併願受験の場合は、併願する各級の受験料を足しあげた額となります。
2.秘書検定の難易度や勉強時間はどれくらい?
◆合格率や難易度を級ごとにチェック!
級ごとの難易度と求められる内容は、下記の通りです。合格率は第116回(2018/11/11実施)の情報を掲載していますが、ここ数年の合格率を見てみると、実施回によって±5%くらいの幅があると考えてよさそうです。
▼3級: (かなり易しい)
第116回合格率:55.6%
主な受験者層は高校生。ごく基本的・初歩的な社会人としての常識・マナーが問われます。学生であっても、きちんとテキストを読んでいれば、さほど苦労することなく合格が可能です。
▼2級: (易しい)
第116回合格率:55.6%
主な受験者層は大学生で、秘書検定で最も受験者数が多く、人気のある級が2級です。3級の発展編といったかんじで、3級よりは少しだけ難易度が上がります。しかしながら、こちらもごく一般的で基本的な社会人としての常識・マナーといった内容です。筆者も大学時代に、初受験で2級を受験しましたが、テキスト・問題集をこなし、基礎知識や基本的な考え方・判断基準を身につけておけば、さほど苦労しなくても十分に一発合格が可能でした。
「2級もそこまで難しい内容ではないから、初めてでも、3級を飛ばして2級から受ける人もかなり多いよ!でも、自信がなければ、無理せず3級から受けてみたり、3・2級を併願受験したりしてもいいかもね。」
▼準1級: (ふつう)
第116回合格率:40.5%
主な受験者は大学生ですが、2級までと比べ、準1級からは会社員や現役秘書の受験者も増えてきます。内容も、2級よりもう一段階上の、社会人として働く上での対応力・判断力や知識などを身につけることが求められます。また、準1級からは面接試験もあるため、筆記問題で出てくるようなベースの知識はもちろん、実際の所作、話し方や表情、身だしなみなども見られるため、そうした練習も必要です。
▼1級: (やや難しい)
第116回合格率:22.1%
大学生から会社員、現役秘書の方まで受験者層はさまざまです。筆記試験も、1級は全問が記述式となるので、勘で答えることはできません。よりしっかりと、秘書としての立ち振る舞いや心得、一般常識や状況判断など、深いところでの理解が必要です。また、面接試験は、準1級より面接官の見る目も厳しくなり、課題の難易度も上がります。話し方、所作などもより完璧を追求した上で、普通の秘書ではない「上級秘書」だということを感じさせる、余裕と自信のある態度も求められ、「なかなか一筋縄では合格できなかった」という声も多く聞かれます。
「準1級は中堅秘書、1級は上級秘書という立場が想定されていて、級が上がるごとに、少しずつ出題傾向も変わっていくよ。最初は先輩や上司の指示に従う場面が多いけど、だんだん後輩へ指導したり、上司の相談に乗ったりする場面の問題が増えていくんだよ。1級まで学べば、これからの社会人生活で、長く活かしていけそうだよね!」
◆勉強時間はどれくらい必要?独学で合格できる?
さて、各級の合格率・難易度をお伝えしましたが、「結局、自分にも合格できそうなのか?」いまいちピンと来ていない方もいるかもしれません。そこで次は、「勉強時間」と「独学でも合格できるか」の目安について見ていきましょう。
<3級・2級> 勉強時間の目安:0~2ヶ月程度 ※1日1時間程度の勉強を想定
3級・2級の合格に必要な勉強時間は、現在のベースの知識によって、かなり差が出ます。いわゆるオフィスワークの経験がない方や、社会人経験のない学生など、ちょっと自信がないな……という方であれば、基本的にはテキスト・問題集をひと通りこなして、今まで触れてこなかったマナーや知識を勉強した方がよいです。
一方で、オフィスワークや、マナーに厳しい職場を何年か経験している社会人の方であれば、現状の知識をさらっと復習して、問題集での演習中心で十分という方も多いようです。特に3級は、オフィスマナーなどに自信のある方であれば、勉強せずに受験して受かる方もいるとか。
いずれも独学でも合格が可能な級かと思いますが、「どうも自信がない」「ひとりで勉強するのが苦手」という方は、資格学校・スクールの対策講座やセミナーなどを利用してもよいかもしれません。学生の場合は、大学などによっては「秘書検定」の講義があり、実際に受験して合格すれば単位がもらえるという場合もあるので、そういった講義を利用すると一石二鳥です。
「まずは、秘書検定の公式サイトの出題例を見たり、書店でテキスト・問題集をパラパラめくってみたりして、『自分にも解けそうか?』というのを確認してみよう。それから、合格に向けてどう勉強していくのか、検討するのがいいと思うよ!」
「秘書検定」の実際の出題例を見てみる≫
(実務技能検定協会 公式サイトへ)
<1級・準1級> 勉強時間の目安:2~6ヶ月程度 ※1日1時間程度の勉強を想定
こちらも試験の性質上、必要な勉強時間はかなり個人差があるのですが、社会人の方であっても、さすがに全く勉強せずに合格するのは厳しくなってきます。
より深く広い知識が必要となることはもちろんですが、普段の仕事の上で「自分ならこう判断する」「こんな行動が正解だろう」と思っても、一般的な正解と自分の基準とが、必ずしも合っているとは限りません。級が上がって内容が複雑になるほど、「秘書検定」で推奨している一般的な考え方や、判断基準の傾向をちゃんとつかんだ方がよいので、やはりテキスト・問題集を何度かまわした方がよいです。また、1級・準1級からは二次試験(面接試験)が課されますので、そちらもきちんと対策しないと、なかなか合格するのは難しいようです。
筆記試験は、しっかりと勉強すれば、独学でもいける範囲かもしれません。しかしながら、特に1級は「記述問題」が苦手な方は苦戦すると思いますので、ポイントをつかむために、講座などを利用するのもよいと思います。面接試験は、資格学校や日本秘書クラブ、大学などの対策講座・セミナーを何度か受けて、指導をしてもらう方が多数派。他人に見てもらうことや、場慣れすることは、合格する上でかなり重要です。そこまではちょっと……という方も、少なくとも公式の対策DVDを観て、勉強や練習はしておきたいですね。
「1級の面接試験は、何度か受験してやっと受かる人も多いみたいだけど、これを乗りこえれば自信もつくし、実務でも堂々と適切な対応ができるようになるはずだよ!」
◆秘書検定は履歴書に書ける資格?
秘書検定の資格を取得するために勉強することで、社会人としての基礎力や対応力が身につく、というのは、おわかりいただけたかと思います。しかしながら、特に学生や求職中の方が気になるのは、「秘書検定を取得して、履歴書やエントリーシートに書くことで、メリットはあるのか?」というところですよね。
<秘書検定3級はあくまでも入門編>
3級の難易度は、秘書検定の中でも一番低めの基礎の基礎ですので、履歴書に書いた場合に、大きなアピールポイントに……というのは、なかなか難しいかもしれません。しかしながら、他にあまり取得資格がないのであれば、何も書かないよりはずっとよいです。
「3級は入門編」という評価をする企業が多いとは思いますが、学生の方、特に高校生の方であれば、少なくとも「社会人になるということを、しっかり意識している」「最低限の基礎はできている」というアピールにはなり、良い印象は与えられそうです。
<秘書検定は2級以上ならアピールになる>
一般的には、履歴書に書くことで評価されることがあるのは、秘書検定では2級からだと言われています。2級の場合、入門編である3級よりも発展し、「マナーや一般常識を身につける意欲がある」「社会人としての基礎を学んでいる」というアピールは強まります。特に、秘書検定での知識が活かされる「事務職」や「秘書」の求人の場合には、まわりのライバルの中にも、秘書検定2級以上の取得者は多いかと思います。
とは言え、2級はまだ面接もなく、難関試験というわけではないので、大変コスパがよい級です。そのため、就職活動をひかえた学生を中心に、一番人気があるのが2級なのです。就職活動のアピールポイントとして使いたいというのであれば、少なくとも2級まで取得しておくのがおすすめです。
「『秘書検定2級以上』を歓迎・必須としている求人は、実は結構見かけるよ!」
<準1級・1級は秘書や事務職を目指すなら有利>
2級までは、どちらかというと「選考の決め手とまではならないものの、好印象・好評価を受けやすい」というかんじですが、準1級・1級は、難易度とともに評価も上がります。合格率も下がり、取得している人も少なく目を引くので、就職活動をする上で、大きく影響してくる場合もあります。
もちろん、職種にもよるのですが、特に未経験から「秘書」や「事務職」あるいは「受付・フロント」などの求人に応募する場合は、目的意識を持って努力し、「業務上必要な知識」や「立ち振る舞い」を身につけているというアピールにもなり、選考を有利に進めることができるでしょう。
また、そうした職種の場合、「必要資格」「優遇・歓迎条件」として秘書検定を挙げている求人もかなり多いので、強い武器になることは間違いありません。「2級以上」という求人条件の場合でも、準1級・1級を取得していれば、ライバルより一歩リードです。ぜひ気合のある方は、準1級・1級も挑戦・取得したいところです。
3.★資格受験生の声~秘書検定合格を目指す理由~★
実際にどういう目的で秘書検定を受験する人がいるのか、LECのWeb奨学生試験に応募していただいた方の声をご紹介します。
「秘書検定を受験して、基礎から学びたい」(30代男性 会社員)
私が秘書検定を受験しようと考えたのは、一度基礎から学びたいと感じたからです。 実家が自営であり総合職として勤務していたために、より独自なものを習得してまるでパズルのように当てはめるという対応しかしていませんでした。正しい理解も知識もないままにお客様や取引先とのやりとりをしていて良いのかと、考えるようになってきました。 しかし、それでは成長はないと感じ一から学びたいと現在強く感じています。以前行政書士等を取得する際にも利用させて頂いたLECさんを信じて講座で一から基礎から学びたいと思います。 講座を通じ基礎を学び資格だけではなく実務にも直結させたいと考えています。まだまだ資格試験に終わりはないために、これからも利用させて頂きたく思います。 |
「『行政書士』というなかなか難しい資格も持っていて、すでにしっかり社会人として働いている人でも、秘書検定の有用性を感じているっていうのは興味深いね。」
秘書検定の受験者として一番多いのは、やはり「初めて社会人になる」「初めてオフィスワークや秘書の仕事をする」という学生や新社会人、異業種からの転職をする方などです。
しかしながら、一方では「すでにある程度仕事をこなしているけど、このやり方は一般的なものなのか?」「自分は本当にマナーや知識を習得できているのか?」と考えて受験する社会人も、実は多くいますし、そういう方にもおすすめの資格です。会社や業界などによって、慣習やこまかい違いはもちろんありますが、「一般的」なマナー・常識を知っておくことで、どんな職場でも、よりよい対応ができるはずです。
「しかもこの方、秘書検定の受験者では珍しい、男性だね!」
秘書検定の受験者は、実に9割が女性です。では、男性が受験する意味はあまりないのか、というと……むしろ逆です。オフィスワークをしている男性もたくさんいることはもちろんですが、冒頭でも言っていたように、秘書検定は、社会人であれば誰もが持っておきたいスキルを身につけるための資格だからです。秘書検定で学んだ知識は、たとえ営業職や販売職、技術職などであっても、職場で働く上でのベースとなるはずです。
さらに、就職試験の場では、男性が秘書検定を持っていると、女性の場合よりもかなり目立ちます。
面接でその点に触れられる可能性も高くなりますし、触れてもらえればこっちのもので、「入社後のことも視野に入れて努力している」「社会人としてのマナーや一般知識を習得している」という自己アピールのチャンスを増やすことにつながります。ですから、「就職活動の材料として」ということであれば、まだまだ取得者の少ない男性の方が、むしろ、この資格が活きてくるはずです。
まとめ
秘書検定は、テキストも数多く出版されており、早稲田教育出版から出ている公式テキスト・問題集だけでも、各級ごとに数種類あります。基礎からしっかり派、速習派、たくさん演習したい派など、さまざまなレベルやタイプの人に合ったものがありますので、どんな人でも資格勉強を始めやすく、受験しやすい資格です。
社会人としての基礎的な知識やマナーなどは、新入社員研修や、OJTを通して先輩が丁寧に指導してくれる場合ももちろんありますが、そこまでこまかくは、手が回らないという会社も多いものです。また、一度研修で教えられた程度ですと、なかなか身にはつかないことも多いですよね。秘書検定で学ぶ知識は、どんな職場でもきっと役立ちますので、社会人・学生など立場を問わず、ぜひ一度は勉強しておきたい内容です。「秘書検定」が気になる人は、まずは気軽にテキストを手にとってみてはいかがでしょうか。
<登場人物紹介>
謎の人:誰だか知らないけどやたらと資格に詳しくて教えたがり。なんだかとっても怪しいが、話を聞いてみると、受験生やスキルアップを目指す人達のためになることを、ひたすら教えてくれているだけだったりする。案外、ただの親切な人なのかもしれないが、何者なのか?人間界の資格試験を受験できるのか?は、やっぱり謎。 |