40代を目前にし、なんだか将来が不安になってきた、会社員のまさお。
今回は『行政書士の仕事』について、とっても賢く資格を知り尽くした、ふくろうのふくちゃんが教えてくれます。
(まさお)「ふくちゃん~最近ふと自分の将来を想像したときに、このままじゃだめだなって思って・・・一生働ける資格をとって、この漠然とした不安な気持ちをなくしたい!」
(ふくちゃん)「おっ、いい心がけだね~。生涯働けるってことは、開業できる資格がいいと思うよ。行政書士なんてどうかな?」
「聞いたことはあるけど、なんとなくしか知らないかも。これから勉強してもなれる?」
「行政書士は、資格を取って登録すれば、すぐに働けるからおすすめだよ!合格者は30代~40代が一番多いから、まさに、まさお世代!しかも最近は、セカンドキャリアを見越して、行政書士試験合格を目指す、50代以上の人が増えているよ。」
1.書類作成だけじゃない!?行政書士の仕事とは
「行政書士って、何やってるのかイメージがわかないんだよね~。ふくちゃん、詳しく教えて。」
「了解!でも、行政書士って一言でいっても、業務の範囲がかなり広いんだ。簡単に言えば、官公庁への手続きとか書類作成とか・・・市民と行政機関の橋渡し的な仕事かな。」
「橋渡しか~かっこいい響きだね!ってことは、かなり世の中で重要な存在だね!」
「そうだよ。それに「特定行政書士」っていうのが誕生して、ますます注目されているよ!」
【行政書士の仕事内容とは?】
行政書士の業務範囲はかなり広く、多岐に渡りますが、代表的な業務としては下記の3つです。
(1)官公庁(官庁と地方公共団体の役所)への手続き、いわゆる許認可業務よばれるもの
(2)権利義務・事実証明関係書類の作成や相談業務
(3)契約書作成等
これだけ見ても、イメージできない方も多いかと思いますので、具体的な例を挙げてみましょう。
許認可業務とは、飲食店を開業したい、土地を活用して建物を建設したい、法人を設立したい、日本の国籍を取得したい・・・など、行政に何かしら届出をする必要のある事柄について、行政書士が代理で申請や手続きをする業務です。
行政書士は、市民と行政の間に入って業務を行う、なくてはならない存在といえます。
権利義務・事実証明に関する書類とは、あらゆる取引の時に結ぶ各種契約書や遺言書・外国人の永住許可申請書・会社・法人の定款、議事録等など、様々なものがあります。
これらの書類の作成代理などは、行政書士にしか認められていない業務(=独占業務)です。
【弁護士しかできなかったことも可能に?特定行政書士とは】
行政書士法の改正(平成26年12月27日施行)により、行政書士の世界に「特定行政書士」が誕生しました。
日本行政書士会連合会が実施する研修を、修了(全講義の受講及び考査基準点に到達)することで、特定行政書士になることができ、「不服申立て」の業務ができるようになります。
「不服申立て」とは、依頼者が飲食店開業など、何かを始めたいとき、行政書士が代理で許認可申請を行いますが、何らかの理由で、行政機関より不許可となった場合に、見直しを求める手続きのことをいいます。
「不服申立て」は、これまで弁護士にしかできず、行政書士の業務の範囲外でした。しかしこの法律改正により、行政書士が一連の業務を、最後まで責任を持って、できるようになりました。
特定行政書士は、全国に4万6千人以上いる行政書士のうち、まだ1割程度しかいません。
そのため、行政書士として開業する場合には、特定行政書士になっておくと、大きな営業ポイントになるかもしれませんね。
2.行政書士の今後や資格取得のメリットは?
「最近は、AI(人工知能)がかなり進歩してきて、人間は仕事を奪われる・・・なんて聞くけど、これからの時代に行政書士って生き残っていけるのかな?」
「人間にしかできない仕事も、まだまだあるよ!それに行政書士のフィールドは、広がっているんだ。」
「そうなんだ~仕事に新しい分野が増えるっていうのは、なんだか今後も期待できるね!」
「それに、行政書士の知識は、いろいろな法律資格と重なっているから、他の資格にチャレンジするのもおススメだよ。」
【今後求められる行政書士とは】
近年、行政書士を取り巻く環境は、大きく変わりつつあります。
官公庁への手続きなども、電子申請システムの導入が進んでおり、行政書士に依頼しなくても、マニュアルを見ながら自分でできる、ということも当たり前になってきました。
つまり、単純な代理申請業務の仕事ばかりやっていては、仕事が減っていくということです。
しかし、複雑なものや相談業務など、まだまだ人間でないとできない業務も、もちろんあります。
また、世の中の法律は増え続けており、その法律のほとんが行政法(=行政書士の業務範囲)のため、仕事のフィールドは広がり続けている、ということです。
行政書士の新しいフィールドの例としては、民泊やドローンなどが挙げられます。
「民泊」は、個人宅や投資用に所有している部屋などを、貸しだすことを言います。
日本政府観光局(JNTO)の調査データによると、日本に訪れる外国人旅行者は、2017年には2800万人をこえ、10年前と比べると、3倍以上に増加しています。
このような、年々増加する外国人旅行者のために、「民泊」は一気に注目されるようになりました。
その反面、民泊を始めるための許可を得る基準というのが、まだまだあいまいな部分があり、対応が追いついていません。
近年、個人で所有することも増えてきた「ドローン」についても、飛ばすためには、誰にどうやって許可を取ればいいのか?など、環境の整備が整っておらず、グレーゾーンが多いのが現状です。
このような、新しい分野に自ら飛び飛んでいき、自分の得意分野にすることができれば、行政書士として大きな武器になることでしょう。
【ダブルライセンスやキャリアアップにもおすすめ】
行政書士試験合格に向け、勉強している人の中には、行政書士になること=ゴールではなく、さらにダブルライセンス・キャリアアップを目指す人もいます。
行政書士試験の出題科目は、司法書士や宅建(宅地建物取引士)と一部重なっています。
さらには、行政書士に合格すれば、大学・短大・高専(5年制)を卒業していなくても、社労士(社会保険労務士)の受験資格を得ることができます。
また、行政書士登録をすれば、弁理士試験の科目免除も受けられるなど、あらゆる法律系資格に通じてきます。
これらの資格を1から勉強するのではとても大変ですが、持っている知識にプラスアルファの勉強で合格することが可能になります。
他の資格にチャレンジしやすい!というのは、行政書士資格を取得する、大きなメリットの1つではないでしょうか。
もし、行政書士として開業する際にも、「行政書士・社会保険労務士事務所」などと2つの看板が掲げられたら、大きな強みにもなるはずです。
3.行政書士のライフスタイル・開業して成功するには?
「行政書士の知識って、会社でも生かせるけど、やっぱりいつかは開業して、自分の事務所とか持ちたいな~。」
「開業すると、会社員より自由な働き方ができるしね。やっぱり、会社にしばられない!ってのは、魅力の1つだよね。」
「自由な働き方って憧れるな~。でも、開業しても仕事がなくてすぐ辞めた・・なんて話も聞くから、仕事を取れる行政書士になりたい!」
「独立することが、ゴールじゃないからね!開業して成功するためには、資格を取るとき以上に、日々努力し続けることが必要だよ。」
★ライフスタイルアンケート~行政書士受験生・合格者の声~
Q.行政書士のライフスタイルにおける魅力は何ですか?
※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:行政書士受験生・合格者)
実際の受験生・合格者に、ライフスタイルの魅力を聞いてみると、「独立開業ができる」「生涯現役で働ける」という意見が圧倒的多数で、どちらも30%をこえました。
人生100年時代といわれる今、手に職を持ち、退職後に困らないようにしたい、という人が増えているのではないでしょうか。
【開業して成功するための3つのステップとは?】
独立開業した行政書士は、時間やお金の使い方など、全て自分で決められるため、通常の会社員よりも自由な働き方が可能となります。それに加えて、行政書士の業務範囲は広いため、その中から「やりたいことさえも自分で決められる」というのが、開業行政書士の大きなメリットではないでしょうか。
しかし、自由度が高い反面、開業したものの仕事がない・・・という状況も大いにあります。
では、開業して成功するには、どうすればいいのでしょうか。
(1)ウェブ集客だけじゃだめ?名前を知ってもらうためには
仕事を依頼してもらうには、まず自分の事務所を見つけてもらい、知ってもらわないことには何も始まりません。
そこで、依頼する行政書士を探している人が、スマホやパソコンなどで検索したときに、検索上位に表示され、かつホームページを見に来てくれるように、誘導しなくてはなりません。
そのためには、目を引くタイトル(キャッチコピー)を付けたり、まめに更新して記事を増やしたりなど、さまざまな工夫をする必要があります。
しかし、ウェブサイトばかりに頼るのではなく、他の行政書士や司法書士など士業の人達と、日頃からつながりを持ち、人脈を生かして、仕事の相談をし合ったり、仕事を紹介しあったりいくことも、とても大切です。
ある程度実績を積重ねた後は、異なる職種との交流会などに参加すると、ビジネスチャンスが広がるかもしれませんね。
(2)今までの経験を十分に生かし、専門分野に!
行政書士の業務範囲は、とても広いため、専門分野を絞って開業することが、差別化につながります。
専門分野を絞るときには、自分の前職に関連する分野など、得意分野があれば大きな「強み」になります。
また、昔家族が相続でもめていたとか、外国人の同僚から、日本に永住したいと相談を受けた・・・など、何か身近な経験も、仕事においては、いい経験となり、知識を生かせるかもしれません。
また、その分野について日々勉強したり、最近の動向について、いち早く情報をキャッチすることで、より専門性を高めることも、とても重要です。
(3)また相談したい!と思わせる行政書士になる
最も重要なのは、一度仕事を依頼してくれた人を、リピーターにできるかどうかです。
依頼者に、今後も何かあったら相談したい、この人は信頼できる「行政書士」だ、思ってもらえれば、その後も自然と仕事をいただけたり、いい評判が広がっていくでしょう。
依頼をもらった案件が終了したら、その企業や人との関係も終わり!ではなく、一生付き合うつもりで真摯に向き合うことで、信頼が生まれ、次の仕事にもつながるのではないでしょうか。
4.セカンドキャリアに人気!行政書士の魅力はこの3つ!
「行政書士にどんどん興味が出てきたんだけど・・・一番の魅力って何だろう?」
「やっぱり、業務の範囲は無限大ってことかな!」
「え、どういうこと?業務が増え続けているってこと?」
「行政書士の業務は、この分野だけといった範囲が定まっていないんだ。だから、法律が増える度に、仕事が生まれる感じかな~。」
【行政書士の魅力とは】
(1)業務のフィールドは無限大
行政書士は、弁理士や税理士などと違って、業務の分野が特定されていません。
そのため、世の中の法律が増えるたびに、行政書士の業務の範囲が増えていく、といってもいいでしょう。
時代の変化に合わせて、世の中の法律は増えていくことが予想されますので、現在でも「1万種類以上」あるといわれている行政業務は、ますます広がっていくと考えられます。
このように、「どんどん新しいフィールドが増えていく」というのが、行政書士の最大の魅力であり、仕事をしていて、わくわくする点ではないでしょうか。
(2)やりたいことが自分で決められる
行政書士になれば、「企業で働く」だけでなく、「開業」という選択肢が増え、自分の自由で道を選ぶことができます。
開業した場合は、かなり幅広い業務の中から、自分のやりたいことを自由に選ぶことができる上に、ビジネスのやり方・時間の使い方も自由に選択できます。
たとえ、開業という道を選ばなかったとしても、行政書士は法律知識全般を学ぶため、法律事務所など、法律関係の職場への転職には、強みになります。また、合格率10%前後(過去5年でいうと)の国家資格を努力して合格した、という事実を証明するものとなりますので、企業への転職にもプラスになるでしょう。
(3)独立開業すれば、生涯働ける
士業には、定年・退職といった概念がありませんので、開業すれば生涯働ける、というのは大きな魅力といえます。
近年は特に、退職後を見据え、50代以上のキャリア世代で行政書士を目指す人が増えてきています。2017年(平成29年度)の行政書士試験合格者のうち、なんと21.6%が50代以上という結果でした。
前にも述べましたが、行政書士として開業する際には、専門分野を絞って、専門性を高めることが大切です。
ある程度年齢を重ねてきた方の場合は、今までの知識・経験を「専門分野」に生かすことで、それが強みになるでしょう。
★仕事の魅力アンケート~行政書士受験生・合格者の声~
Q.行政書士の仕事の魅力は何ですか?
※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:行政書士受験生・合格者)
実際の受験生・合格者に、仕事の魅力を聞いてみると、行政書士には、独占業務も多く認められているため、「専門性がある」を選んだ人が20%に上り、最も多い結果となりました。
アンケート回答者には、女性も2割弱いましたが、「スキルアップできる」「昇進に役立つ」を選んだ人は一人もいませんでした。女性の場合は、「開業して、育児や家事と両立しながら自分のペースで働きたい」と考える人が多いのではないでしょうか。
5.もうからないってほんと?行政書士の年収は?
「行政書士って、弁護士や司法書士みたいには年収が高くないイメージかも・・・。実際稼げるのかな?」
「稼いでいる人と、そうでない人の差が、激しいってのが現実かな~。」
「頑張り次第で稼げるけど、競争相手も多いってことだね!」
「そうだね!でも実際の受験生や合格者にアンケートをとったら、会社で手当がついたり、給料がアップするって人が23%もいたよ。目指したい年収も聞いてみたから、一緒に結果をみてみよう~。」
★年収アンケート~行政書士受験生・合格者の声~
※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:行政書士受験生・合格者)
実際の受験生・合格者はというと、500万~650万円までが最も多い26%となり、その他・気にしないという方も23%に上りました。
手元のアンケートによると、年収を「気にしない」と回答した方の、行政書士資格取得を目指している理由は、「司法書士になるためのステップとして」や「定年後を見越して」という方が多いようです。
【実際の年収ってどうなの?】
行政書士会が公表している、平成27年度の報酬額統計調査の結果によると、報酬の平均額は申請内容によって大きく異なります。報酬額が1万円台~のものもあれば、高いもの( 開発行為許可申請など)ですと、100万円を超えるものまであります。
年収はというと、あまり公式なデータが公表されていませんが、平成28年経済センサス-活動調査によると、行政書士事務所の売上(収入)金額平均は、798万円となっています。ここからあらゆる経費を差し引いた額が収入となります。
開業した場合は特に、年収の差が大きい、というのが現状です。副業的にやっている人は、年収100万円位の人もいますし、稼いでいる人の中には、年収2000万円以上という人もいます。
退職後のチャレンジとして開業した場合や、子育て中で長時間は働けないから、自宅で開業している場合などは、少ない収入でも満足している、という人もいるので、収入だけでは図れないところもあります。
行政書士事務所の求人情報を見てみても、年収360~800万円くらいと大きく開きがあるようです。
平成27年度の報酬額統計調査の結果(行政書士会HP)へ>>
行政書士実務家のそれぞれの生き方を見る(LECサイト)へ>>
6.行政書士にはどんな人が向いている?
「行政書士って、業務の範囲が広いことはよくわかったけど、一般的にはどんな人が向いてるんだろう?」
「書類の作成や申請業務が多いから、細かい作業ができることは、まず大前提だね。」
「なるほど!でも事務処理だけじゃなくて、相談業務も仕事のひとつだから、コミュニケーション力も必要だよね。」
「その通り!自分なら、相談がしやすくて、寄り添ってくれる行政書士に仕事を依頼したいよね。実際の受験生や合格者にも、向いている人を聞いてみたよ。」
★向いている人アンケート~行政書士受験生・合格者の声~
最も多かったのは、「営業力やコミュニケーション力・行動力がある人」という意見で、全体の21%に上りました。
この他にも「経営能力がある」「交渉力がある」など、実際に行政書士として開業し、成功するために必要な力を挙げた人が、最も多いという結果となりました。
次に、全体の19%の人が、「真面目でコツコツ努力できる人」が向いていると回答し、2番目に多い意見となりました。
行政書士の仕事は、書類の作成など、事務処理の時間がとても多いので、きちんと業務の計画を立て、地道にやり遂げる力というのが、とても大切ですね。
ほかにも、探究心がある・興味関心が高い人、などの意見も多くみられました。
行政書士のフィールドは、今後もどんどん広がっていくことは間違いありません。そのため、自分で新しい分野を開拓していくためには、何事にも興味を持って、勉強し続けていく力が求められるでしょう。
【行政書士に向いている人とは?どんな能力が必要?】
行政書士として、日々の業務を行うにあたり、事務処理をきちんとこなせる力、コミュニケーション力はとても重要です。
また、開業した場合は特に、自由な反面、全て自分で決断していかなければならないため、自己管理能力が高く、スケジュール管理がきちんとできる人が、向いているといえます。
しかし、行政書士にとって最も重要なのは、「好奇心旺盛」で「行動力がある」という点ではないでしょうか。
法律は今後も増え続ける=行政書士の業務は、自分次第で広げていくことが可能である!ということです。
あまり誰も手をつけていないような新しい分野に、自ら興味を持って飛び込んでいく勇気と行動力が、今後の行政書士には求められるのではないでしょうか。
■まとめ■
行政書士の「仕事や今後」「ライフスタイル」「魅力」「年収」「向いている人」などについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
行政書士のフィールドは、今後も広がっていくことが予想されます。そのため、新しいことに興味や関心を持って、積極的に取組める人には、とても魅力的な資格です。
人生100年時代といわれる今、将来の不安を減らすためにも、一生働ける資格を目指してみてはいかがでしょうか。
<登場人物ご案内>
ふくちゃん:とっても賢く、資格を知り尽くしている。博士っぽい見た目だが、中身は幼くかわいいキャラクターのため、ふくちゃんと呼ばれている。
まさお:新卒で入った会社で、中堅どころまで上り詰めた39歳会社員。将来を見据えて、何か生涯働ける資格をとれたら・・・と考え始めてたところ。