土地家屋調査士とは?~国民の財産を守り自分が生きた証を残す仕事~

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この記事を書いた人:Y

41歳、会社員の剛(つよし)さん。小さい頃、隣宅から実家の庭に樹木の枝が伸びてきたことが原因で、境界線問題に発展し、両親が諸問題を抱えていたことをかすかに記憶しています。その時に問題を解決してくれた人がいたことを思い出して調べてみると、土地家屋調査士という資格があることを初めて知りました。いったいどんな資格なのか?悩み多き社会人や受験生にいつも適確なアドバイスをくれる天狗先生が、土地家屋調査士の仕事の魅力について丁寧に詳しく教えてくれます。


天狗先生「剛さんは土地家屋調査士という資格を知っているかい?」

剛さん 「うん、実はこの前、土地家屋調査士という資格があることを知ったんだ。街や住宅地で時々見かける、カメラみたいな機械を三脚みたいなのにのせて測っている人が土地家屋調査士なんでしょ?」

天狗先生「あれは、トータルステーションという測量機材で、土地家屋調査士が仕事で必ず使う必需品なんだよ。」


目次

1.国民の財産を守る土地家屋調査士の仕事は?


天狗先生「剛さんは、『不動産の表題登記』を知っているかい?国家機関(法務局)に登録された不動産の場所や広さ・用途などの情報のことで、土地を分けたり(分筆)、まとめたり(合筆)、建物を建てた場合には、この表題登記が義務づけられているんだよ。

また、<不動産を自分の所有物だと表現するための登記>や、<住宅ローンを借りる際にも必ず求められる担保(抵当権)の登記>をするには、『不動産の表題登記』がしてあることが条件となるよ。

これらの仕事を独占業務として担っているのが、土地家屋調査士なんだ。

つまり、土地家屋調査士は、専門的な知識・技術で不動産(土地・家屋)を調査する資格であり、『不動産の表示に関する登記を代理して申請する』資格 なんだよ。」

「土地家屋調査士という資格があることを最近知ったんだ。こんな資格があったんだね!」

天狗先生「そう、土地家屋調査士はとても身近な資格でありながら、同じ不動産系資格の仲間である司法書士や宅建士なんかと比べても、知名度はあまり高くないよ。でも、『不動産の表題登記』は、測量を伴う専門的な技術が必要なため、土地家屋調査士にしかできない独占業務なんだ。」

「知名度は低くても、独占業務ができるなんて、土地家屋調査士って意外とすごい資格なんじゃないかな?」


「不動産の表題登記(表示に関する登記)」は、土地や建物の面積、形、使い方が変わる度に必要です。例えば、建物の新築、増築、土地を分けるなどもその例です。

しかしながら、「不動産の表題登記」は高度な測量技術と、登記申請についての知識が豊富でないと、こなせない業務です。測量を伴う専門的な技術が必要なため、土地家屋調査士にしかできない独占業務なのです。 つまり土地家屋調査士は、測量と表題登記のプロフェッショナルであるといえます。

また近年、国民の権利意識の高まりによって、境界関係の仕事が増えています。また一方で、年間約1200万件もの登記事件(申請業務)があり、土地家屋調査士会員(登録者)数は、近年減少傾向にあるため、安定した仕事が見込めます。

土地家屋調査士の仕事は、この世の中に「土地」と「建物」、いわゆる「不動産」がある限り、なくなることのない仕事だといえます。

【そもそも土地家屋調査士と司法書士の違いは?】

「不動産登記」とは、「どんな建物と土地を誰がどのように所有しているか」ということを明らかにする制度です。

この情報は誰でも知ることができるので、不動産の売買時には安心で便利であるほか、不動産の権利を主張し、自分の財産を守るために必要不可欠な制度です。

この制度を支えるために「不動産登記」は、全部で2つの登記を公開しています。これら2つの「不動産登記」について、本人に代わって申請を行います。(以下参照)

「不動産登記」のうち、「権利に関する登記」は、司法書士はもちろんのこと、司法書士以外の資格者(弁護士など)であっても対応することが可能ですが、「表示に関する登記」の代理申請業務については、土地家屋調査士にしかその権利が与えられていません。いわばこの「独占業務」を担える資格が、土地家屋調査士なのです。

また、「表示に関する登記」は、国民の義務とされていますが、「権利に関する登記」は義務化はされていません。土地家屋調査士は、国民の義務である「表示に関する登記」の代理申請業務を独占できる資格であるといえます。

(1)表示に関する登記
内容:どこにどんな不動産があるのか(広さや種類など)
代理申請者:土地家屋調査士のみ

(2)権利に関する登記
内容:誰がどんな権利をもっているか(不動産の所有者など)
代理申請者:司法書士など

【意外と身近な土地家屋調査士の仕事とは?】

土地家屋調査士の独占業務である「不動産の表題登記(表示に関する登記)」は、土地や建物の面積、形、使い方が変わる度に必要です。例えば、以下のような時は、土地家屋調査士の出番です。

(1)家を新築・増築した時
(2)土地の利用状況(地目)を変更した時
(3)農地や山林を宅地に変更したい時
(4)土地を2つに分割して片側の土地を売りたい時
(5)相続・贈与などで土地を分けたい時、まとめたい時
(6)土地の境界や面積を知りたい時
(7)境界がわからなくなった時

土地家屋調査士は、これらの事例が起きた時に、土地や建物の形状、面積などを精度の高い厳密な調査(土地の境界の調査)・測量(土地の地積の測定)を、スムーズに正確に行うことで、依頼者に代わって、「不動産の表題登記(表示に関する登記)」の代理申請を行っています。

土地家屋調査士の仕事は、フィールドワークとデスクワークの2つに分けられます。フィールドワークとデスクワークの両方をこなし、依頼者に代わって「不動産の表題登記(表示に関する登記)」の代理申請を行い、最終的に法務局から登記完了連絡がきて、依頼者から報酬を受け取って、任務完了です。

(1)フィールドワーク:現地調査、測量、境界確定

登記記録の情報と現地とのズレや共通点を確認し、トータルステーションなどの測量機材を持ち込んでデータ(座標)を取ったり、隣接者と協議したり、境界表を設置したりします 。

(2)デスクワーク:書類作成、登記申請・受領、引渡し

不動産の表題登記を申請するため、フィールドワークで測量したものをコンピューター利用設計システム(CAD)と呼ばれるPCソフトなどを使用して図面化し、登記申請書や必要書類(地積測量図など)を用意し、隣の土地所有者などから同意書をもらいます。登記申請の準備が整ったら、書類を管轄の法務局へ提出します。


「土地家屋調査士は、身近な仕事なんだね。急に親近感が出てきたなぁ。。。外仕事と中仕事のバランスも良さそうだし、測量機材や専用ソフトを使う仕事内容が、非常に興味深いかも。」

天狗先生「土地家屋調査士には、相反するけれども、タフさと緻密さの両方が必要なんだ。地図を見ることが好きな剛さんは、その土地の歴史などを知ることもできるし、意外と向いているんじゃないかな。」


土地家屋調査士の仕事の依頼主は、不動産業者や建設会社、工務店、ハウスメーカー、解体工事会社、金融機関などがあげられます。また、 司法書士、弁護士、税理士などの他士業からの仕事の依頼も数多くあります。

また近年、公共事業や官公署などの嘱託にかかわる表示に関する登記や地籍整備事業(政府が中心となり推進している測量調査で、街づくりや公共事業の円滑化、災害の復旧に役立ちます)など、国から依頼される仕事が占める割合は高めです。

その他、地方を中心に、個人が依頼主となることも多くあります。

土地や建物の面積、形、使い方が変わる度に必要となるため、土地家屋調査士と関わることもあるでしょう。例えば、建物については、完成後1ヵ月以内に表題登記をしなければならないと定められています。


「私の実家は、山を切り開いて開発した新しい団地に、両親が建てた一軒家で、それなりに広い庭もあって、両親が野菜や果物を育てていたんだ。私が小学生の時に、隣家から樹木の枝が伸びてきたことがきっかけで、そもそも塀ブロックの位置が本当はどこが正しいのかについて、両親がとても頭を悩ませていたことをよく覚えているよ。」

天狗先生「うんうん、それで?」

「その後、たぶんあれは土地家屋調査士の方だと思うんだけれど、測量して正しい境界線を定めてくれたことで、両親が抱えていた問題が解決できたんだ。その当時、我が家を救ってくれた救世主が土地家屋調査士なんでしょ?」

天狗先生「剛さんにそんな経験があったんだね!そうそう、まさにその方が土地家屋調査士だよ。」

「やっぱりそうだったんだ!土地家屋調査士という資格には運命を感じるなぁ。。。」


 2.土地家屋調査士の活躍の場とは?

土地家屋調査士は、公共事業や官公署などの依頼を受けて行う、表示に関する登記や地籍整備事業(政府が中心となり推進している測量調査で、街づくりや公共事業の円滑化、災害の復旧に役立ちます)など、国から依頼される公共性の高い仕事が多くあるため、まずます活躍の場が広がっています。

さらに、従来からある仕事だけにとらわれず、もっと視野を広げることができれば、土地家屋調査士はもっとさまざまなかたちで世の中に貢献できます。例えば、弁護士・行政書士・会計士・税理士などと協力したワンストップサービスを提供するなども考えられます。

また、測量という高い専門技術を持った上で、さらに能力を幅広く磨けば、街や山を活性化させるなど、未来を切りひらくコンサルティング業務を行うこともできます。

【独立開業があたりまえの資格!?】

土地家屋調査士は、試験合格後の資格登録にあたり、実務経験などの特別な条件が一切ないため、独立開業をするまでのハードルが非常に低いのが特徴です。そのため、土地家屋調査士は独立開業向けの資格であるといえます。

独立開業をするにあたって必要な準備としては、基本的なものとして、PC、プリンター、自家用車などがあげられます。また、土地家屋調査士の仕事は、司法書士や弁護士とは異なり、訪問者がいないことが多いので、基本的には自宅で開業ができます。そのため、よほど大きな事務所を構えない限り、事務所費用などはかかりません。

また、必要な測量機材として、コンベックス(ものさし)、トランジット(土地測量時に角度と距離を測る測量の機械)、 トータルステーション(測量機材)などがありますが、これらはレンタル利用なども充実しているため、必ず自身で全てそろえなければならないものではありません。

実際に、土地家屋調査士試験合格を目指す受験生に、土地家屋調査士の魅力について、聞いてみました。

★ライフスタイルアンケート~土地家屋調査士受験生・合格者の声~

Q.土地家屋調査士のライフスタイルにおける魅力はなんですか?

土地家屋ライフスタイル

※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:土地家屋調査士受験生・合格者)


「やっぱり土地家屋調査士の一番の魅力は、圧倒的に『独立開業できること』なんだね!」

天狗先生「土地家屋調査士は、特に地方を中心として、独立開業をするか後継ぎが大半だといわれているよ。

土地家屋調査士として、実際に仕事をするうえで、実務経験が不可欠であるため、必要な実務経験をえるために、土地家屋調査士事務所や測量会社に勤務する人も多くみられるよ。

土地家屋調査士の世界では、『経験のない資格保有者』よりも『経験のある無資格者』の方が信頼される場面も多々あるため、実務経験が重視されているのが実状だよ。」

「やっぱり独立開業するとなると、自分の力量だけで勝負しなければならないから、お客様である依頼主に信頼してもらうためにも、実務経験が不可欠なんだね。。。私は20年近い社会経験はあるけれど、不動産業界も初めてだし、当然ながら実務経験もないから、正直厳しいかなぁ…」

天狗先生「いやいやそれが実は、土地家屋調査士は剛さんのような社会経験が活きてくる資格なんだよ!

土地家屋調査士は、合格者の平均年齢が40代前半と非常に高い資格であるため、社会人経験をもつ人が大半だよ。また、人との関わりが非常に強い仕事だから、社会人として培った経験がとても活きる資格だといわれているよ。剛さんも、今からでもあきらめる必要は全然ないよ!

そのため、自身がもつ人脈や社会経験をおおいに活用して、まずは早期に独立開業し、実務経験を積みながら前進するという方法もありかもしれないね。」


 【独占業務だから活躍できる4つの場とは?】


天狗先生「そもそも、『不動産登記制度』は、明治時代の地租改正に端を発しており、その歴史は古いんだけれども、古いがゆえにさまざまな諸問題が生じているんだよ。土地の面積や形状は、明治時代に縄で測ったものを基に計算されたり作図されたりしているから、現況と大きく異なることが多々あるんだよ。特に面積については、地租(土地にかかる税金)を節約するため、面積が過少計上されているケースが多くあって、とんでもない状況のものが実は珍しくないんだ。 」

「え?そうなの?考えてみれば、昔は現代のような便利な機材がなかっただろうから、昔の人は本当に苦労したんだろうね…。でも縄で図ってたなんて、ちょっと驚いたよ。それならズレが生じるのも理解できるね。」

天狗先生「そう、だから土地家屋調査士のような資格が必要だったんだよね。ここでは、土地家屋調査士の仕事を大きく4つに分けてわかりやすく説明するよ。」


一般市民を依頼主とする業務

(1)表示に関する登記申請手続き

(2)筆界特定・ADR(裁判外紛争解決手続き)

官庁・交署を依頼主とする業務

(3)嘱託表示登記

(4)地籍整備事業


(1)表示に関する登記申請手続き

不動産取引の現場では、土地家屋調査士がかかわる場合が多いです。この申請手続きは、専門家である土地家屋調査士だからこそできる仕事であり、土地家屋調査士の業務の中でも中核をなすものです。

土地家屋調査士は、土地や建物の形状、面積などを精度の高い厳密な調査(土地の境界の調査)・測量(土地の地積の測定)を、スムーズに正確に行うことで、依頼者に代わって、「不動産の表題登記(表示に関する登記)」の代理申請を行っています。

(2)筆界特定・ADR(裁判外紛争解決手続き)

土地の公法上の境界(筆界)の確認や発見を目的とする事案の中には、紛争性のあるものが多数存在しています。

この紛争の解決手段として「筆界特定」という制度が用いられ、土地家屋調査士はこの筆界特定の申請の代理を仕事として行うことができます。さらに、紛争解決手段としては法務大臣より一定の能力を認定された土地家屋調査士(ADR認定 土地家屋調査士)が弁護士と共同して、裁判外で紛争を解決していく「ADR(裁判外紛争解決手続き)」という制度も存在し、需要が増えています。

土地家屋調査士会ADRや境界確定訴訟でも、筆界特定制度による筆界は、証拠として活用されますので、境界トラブル解決の第一歩ということもできます。

※筆界特定制度とは?/土地の所有者の申請に基づいて、筆界特定登記官が、民間の専門家である筆界調査委員(土地家屋調査士)の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。 土地の筆界をめぐる問題が生じたときには、裁判(筆界確定訴訟)によって筆界を明らかにするという方法もありますが、その場合、筆界を明らかにするための資料の収集は、所有者自身が行わなければなりません。

筆界特定制度を活用することによって、公的な判断による筆界を明らかにできるため、隣人同士で裁判をしなくても、筆界をめぐる問題の解決を図ることができます。また、当事者の資料収集の負担も軽減されるというメリットもあります。 いわば、筆界をめぐるトラブルを裁判なしで解決を図る制度です。

[対象] 筆界のみ
[解決方法] 筆界特定登記官の判断
[決定書類] 筆界特定書
[法的効果]拘束力はない

※ADR(裁判外紛争解決手続き)とは?/Alternative Dispute Resolution

土地家屋調査士会ADRともいう、各地の土地家屋調査士会が運営する制度。裁判ではなく、土地家屋調査士と弁護士が調停人として、当事者間の話し合いのお手伝いをすることによって、所有権界に関する問題の早期解決を図るものです。裁判の判決のような強制力はありませんが、和解契約書を履行しなければならないという法的効力が付与されます。

[対象] 筆界の確認、所有権界、民事紛争
[解決方法] 話し合い
[決定書類] 和解契約書
[法的効果] 契約の履行

※資料:日本土地家屋調査士連合会パンフレット

「筆界特定制度」をみる(法務省サイト)

「登記・不動産登記」をみる(法務省サイト)

「日本土地家屋調査士会連合会」サイトをみる

(3)嘱託表示登記

公共事業や官公署などの依頼による表示に関する登記の事件は、全国の登記事件の中でもかなり多くの部分を占めるものです。登記行政の円滑な運営を図るには、専門家である土地家屋調査士の存在が不可欠です。

また、建設コンサルタントや測量業者が官公庁や企業の仕事で表題登記をする場合、自社内には土地家屋調査士を抱えずに、外の土地家屋調査士へ外注して対応することが一般的 です。

(4)地籍整備事業

都市部においては、筆界を表した不動産登記法で定められている地図の備え付けはいまだ十分とはいえません。取引が活発である都市部ほど地図の必要性が高いため、政府方針により地籍整備が強力に推進されているところです。

地籍整備事業の過程で筆界が不明であったり、紛争が生じた場合は、土地家屋調査士が、専門家として、直接・間接的に関与していくことが期待されています。

「土地家屋調査士の仕事・拡がる業務範囲」サイトをみる(LEC土地家屋調査士総合サイト)

3.もうからないってほんと?土地家屋調査士の年収は?

報酬自由化も追い風に!?意外と高収入をえられるワケとは?

土地家屋調査士とう資格を目指すにあたって、年収は誰もが必ず気になる情報です。

土地家屋調査士は、一般的にあまりなじみのない資格であるがゆえに、もうからない資格であるなどの情報がひとり歩きしてしまっていることもあります。

結論としては、土地家屋調査士は独立開業が基本となる資格なので、収入もその方の仕事のやり方次第で大きく変わってきます。

土地家屋調査士が行う「不動産の表題登記(表示に関する登記)」の対象物は、建物と土地の2種類ですが、依頼を受けてから完了するまでに、対象物により異なりますが、およそ建物で1週間程度、土地で1~3ヵ月程度かかるといわれています。

例えば、土地の測量に対して支払われる報酬は、1件あたり、20万円~300万円といわれており、地域、対象物、諸条件によってバラつきがあります。

また、建物の測量に対して支払われる報酬は、建物の大きさにもよりますが、通常の2階建の一戸建でしたら、1件あたり、10万円前後の報酬です。例えば、区分建物(マンション)の登記については、1専有部分(1部屋)に対していくらという形で受注額を換算しますので、最低でも数十万円、大規模マンションでしたら、報酬は数百万円にもなります。こちらも、地域、対象物、諸条件によってバラつきがあります。

これは、土地家屋調査士の仕事が、法律的な知識と測量技術を駆使した専門性の高い業務だからこそ支払われる対価といえます。

実際に、土地家屋調査士試験合格を目指す受験生にも、気になる資格手当について、聞いてみました。

★年収・資格手当アンケート~土地家屋調査士受験生・合格者の声~

Q土地家屋調査士資格を取得をした場合、所得UPは見込めますか?または手当て等はつきますか?

土地家屋手当て

※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:土地家屋調査士受験生・合格者)


天狗先生「土地家屋調査士の業務の中に、公共嘱託登記土地家屋調査士協会という組織があって、官公署による登記や測量の案件を一括で受注し、協会の社員である土地家屋調査士が分担して仕事をする場合があるよ。開業したての調査士にとっては、非常にありがたい制度といわれているよ。」

「公共の仕事が定期的にあるのは、新人の土地家屋調査士にとっては、ありがたいよね。」

天狗先生「さらに、規制緩和の影響により、平成15年に報酬規定が撤廃され、従来まで土地家屋調査士会の会則により定められていた報酬基準がなくなり、『報酬自由化』となったんだよ。

そのため、土地家屋調査士自身が自由に自分の報酬を定められる時代となった。この『報酬自由化』が追い風となり、自身の努力次第でいくらでも報酬を獲得できるチャンスが広がっているんだよ。」


【土地家屋調査士の実際の年収は?】

リクナビNEXTの求人情報によると、土地家屋調査士として事務所や企業に雇われ、会社員として働いた場合の年収は、働く事務所や企業によってさまざまですが、年収で400~600万円程度が一般的な相場となっているようです。

独立開業の場合は、年収額に大きな差があるようです。独立開業では、安定して顧客を抱えなければならず、事業を軌道に乗せ、高額の収入を得るまでは、相応の努力と時間が必要とされます。そのため、開業してすぐとベテランとでは大きな差が出ます。

土地家屋調査士は、自分次第で、年収1000万円台の大台突破も夢ではありません。

実際に、土地家屋調査士試験合格を目指す受験生にも、気になる年収について、聞いてみました。

★年収・資格手当アンケート~土地家屋調査士受験生・合格者の声~

Q土地家屋調査士になったら、理想としてはどのくらいの年収を目指したいですか?

土地家屋年収

※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:土地家屋調査士受験生・合格者)


天狗先生「先の説明にあったように、土地の測量に対して支払われる報酬が、1件あたり20~30万円。建物の測量に対して支払われる報酬が、2階建の一戸建で1件あたり10万円。区分建物(マンション)の登記で、大規模マンションであれば数百万円になることもあるよ。もちろん、地域、対象物、諸条件によってバラつきがあるけども、もしも仮に独立開業していて、たとえ月1件しか仕事がなかったとしても、考え方によっては、サラリーマンよりも高い収入が期待できるんだよ。月4件も仕事があれば、十分な生活ができるという話もあるよ。」

「土地家屋調査士は、高い専門技術が必要だし、この報酬こそが、『正当な仕事に対する責任代』になるんだね。」


4.土地家屋調査士の魅力とやりがいとは?

【独立開業だけじゃない!自分が生きた証を残せる仕事?】

土地家屋調査士の魅力は、よく「独立開業」だけがクローズアップされることが多いのですが、実はそれだけではありません。

土地家屋調査士の独占業務である表題登記は、建物が存続する限り、ずっと残り続ける、人々の財産を守る重要な仕事で、とても価値のある仕事です。自身の名前で、社会に大きく貢献できることが土地家屋調査士としての喜びにつながります。

また、登記書の地積測量図を作成した際は、その作成者として土地家屋調査士の名前が残ります。図面は半永久的に保存されるため、未来へ続く結果を残せることも、土地家屋調査士としての大きなやりがいにつながっています。

このように、土地家屋調査士の仕事の最大の魅力は、「自分が生きていた証を残せること」であり、土地家屋調査士は、「記憶に残る仕事、記録に残す仕事 」を行う専門家なのです。

実際に、土地家屋調査士試験合格を目指す受験生にも、土地家屋調査士の仕事の魅力と仕事以外の魅力について、聞いてみました。

★仕事の魅力アンケート~土地家屋調査士受験生・合格者の声~

Q.土地家屋調査士の仕事の魅力はなんですか?

土地家屋仕事魅力

※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:土地家屋調査士受験生・合格者)

Q.土地家屋調査士の仕事以外の魅力はなんですか?

土地家屋仕事以外魅力

※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:土地家屋調査士受験生・合格者)


「地積測量図に自分が生きた証を残せるなんて、とても魅力的なことだね!」

天狗先生「アンケート調査結果でも、『専門性がある、社会的な信頼が得られる、社会に貢献できる』という回答が多数を占めているね。土地家屋調査士を目指す人は皆、志の高い方が多いんだね。素晴らしい!」


 5.土地家屋調査士にはどんな人が向いている?

【聞き上手で資格を取っても勉強し続けられる人?】

土地家屋調査士は、法務局(登記所)の管轄の関係などがあり、地元で働くことの多い地元密着型の仕事が大半です。そのため、多くの土地家屋調査士は、長期の出張や遠方への長距離の移動というものがありません。例えば、女性であっても、子育てや介護と両立しやすくおすすめです。

また近年、測量機器なども、従前よりも性能があがってコンパクトになっています。作業の正確さはもちろんのこと、隣接する地主さんや道路管理者とのコミュニケーション能力が求められ、また細かい作業も多いため、女性にも適しています。

また、土地家屋調査士の仕事は、先に天狗先生が言っていたように、フィールドワークでは「タフさ」が、デスクワークでは「緻密さ」が求められるため、相反する2つの性格をあわせ持つことができる人が適任だともいわれています。

実際に、土地家屋調査士試験合格を目指す受験生にも、土地家屋調査士に向いている人について、聞いてみました。

★向いている人アンケート~土地家屋調査士受験生・合格者の声~

Q.土地家屋調査士に向いている人はどんな人だと思いますか?

土地家屋向いている人

※2018年3~4月 LEC東京リーガルマインド調べ(回答者:土地家屋調査士受験生・合格者)


天狗先生「昨今、測量技術も日々進化しているし、GPS(全地球測位システム)の運用形態が変わると測量の計算方法が変わることもあるんだよ。そのため、資格を取ったあとでも先例や測量技術に対応できるように勉強を続ける必要があるんだ。

また、不動産登記法や民法について、法改正があったり先例の追加があったりした場合には、新しい法令の勉強と修得が必要なんだよ。そのため、土地家屋調査士は、『資格を取っても勉強し続けられる人』に向いている資格であるともいえるよ。」

「資格をとった後も、仕事を続けている限り、ずっと勉強が続くんだね。正当な仕事に対する成果として報酬を得るためには、専門家として、学ぶ気持ちを忘れてはいけないということだよね。勉強になるなぁ。。。」


6.土地家屋調査士の将来性は?変革期のいまこそ新規参入のチャンス?

【変革期を追い風に!需要が高まる土地家屋調査士】

登記申請手続きを規定する「不動産登記法」が平成16年度に改正され、コンピュータによる電子登記が導入されました。また、GPS測量の普及に伴い、測量技術も飛躍的に進歩しました。

また、筆界特定、ADR(裁判外紛争解決手続き)をはじめ、近年は、業界全体が初心者の時代となっています。

さらに近年、一般市民の権利意識が高まり、境界問題の解決が大きくクローズアップされています。これにより典型的な不動産の調査・測量・登記申請業務に加え、新たに「相談業務」が加わってきました。

また、昭和30年代後半からマンション建設ラッシュが本格化し、建築後30年を越える、いわゆる老朽化したマンションのストック数が年々増加傾向にあるため、ここ数年で100万戸のマンションの建替時期にさしかかると言われています。これに伴い、多くの登記申請業務が発生します。土地家屋調査士業務の件数・業務範囲とも広がっていくことが予測されます。


天狗先生「こういったさまざまな時代背景を受けて、ベテラン土地家屋調査士であっても、新人と同じように、新たな登記申請方法や測量技法を身につけなければならなくなっているよ。変革期のいまだからこそ、土地家屋調査士で独立開業して成功をおさめる、また新規参入できるチャンスが広がっているんだよ。

「土地家屋調査士の合格者の平均年齢は40.16歳なので、私とほとんど同じ世代。私がこれから頑張って土地家屋調査士の資格をとっても、ぜんぜん遅くないよね。

何より、業界全体が初心者の時代となって新規参入のチャンスが広がっているのなら、ますます好機だよね!将来、登記書の地積測量図に自分の名前を残せる仕事ができるように、頑張って土地家屋調査士を目指してみようかなぁ。。。」


まとめ

土地家屋調査士の「仕事や将来性」「活躍の場」「魅力」「年収」「向いている人」などについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

平成が幕を閉じ令和という新しい時代になった変革期の今だからこそ、測量という高い専門技術をもった土地家屋調査士の仕事は、変革期や報酬自由化も追い風となり、今後もさらにニーズが高まっていくことは間違いありません。

ぜひ、人生の選択肢を広げる意味でも、「土地家屋調査士」を目指してみてはいかがでしょうか。


天狗先生天狗先生:いつの間にか山奥からおりてきて、悩み多き社会人や受験生にいつも的確なアドバイスをくれる人。神秘的で気高く頼りになる見た目と、田舎の祖父を思い出す温かい印象から、みんなは彼を先生と呼んでいる。ちなみに、体が赤いのはお酒を呑んでいるのではなく、熱過ぎるハートのせいなんだとか。

剛(つよし)さん:工学部卒。41歳の会社員。時々街で見かける測量風景に最近興味をもっている。40歳を過ぎて、時代はどんどん変化していくのに、自分だけ変わり映えのしない平凡な毎日に、退屈な気持ちと、将来に対する不安を感じている。もっと自分が興味のある分野で、自分のペースで、自分らしく働きたいと思っている。地図をながめたり歴史探索がわりと好き。

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