【弁理士】弁理士は、産業財産権(工業所有権)に関するすべての手続きを業務として代理することができる、産業財産権を専門とする国家資格です。発明・考案・意匠・商標について、出願・審判請求手続き等を代理で行い、それを特許庁に登録させ、特許庁とともに車の両輪となって、産業財産権の制度を運用しています。
弁理士の魅力は、高い専門性と高い年収にあります。
その高い専門性をいかし、近年、従前までの出願業務だけにとどまらず、知的財産全般に関する専門家として、コンサルティングサービスや企業の知財戦略の立案など、知的創造サイクルのすべての局面での活躍が求められています。
このように、弁理士は、知的財産権全般のスペシャリストとして、ますます需要が高まっています。
難易度
(非常に難しい)
試験は、筆記試験と口述試験により実施されます。
筆記試験合格者のみ口述試験を受験することができます。
筆記試験は、短答式・論文式の2段階選抜方式で実施されます。
短答式試験合格者のみ論文式試験を受験することができます。
短答式試験合格者は翌年、翌々年の2年間、短答式試験が免除されるため、計画的に受験でき、比較的目指しやすい資格です。また、短答式・論文式それぞれに免除制度の設定があるため、これを活用した受験も可能です。
※短答式試験:受験者数3,078人、合格者数620人、合格率20.1% [2018年度本試験データより]
※論文式試験:受験者数(必須科目:1,070人、選択科目:213人)、合格者261名、合格率23/9% [2018年度本試験データより]
※口述試験:受験者:268人、合格者252名、合格率94.0% [2018年度本試験データより]
平成30年度弁理士試験の結果概要の詳細をみる(特許庁サイト)>>
受験資格
<短答式試験> 学歴、年齢、国籍等による制限なし
<論文式試験> 短答式試験の合格者
<口述試験> 筆記試験(短答式・論文式)の合格者
試験科目・内容
<短答式試験>
弁理士活動を行うに当たり、必要な基礎的知識を有するか否かを判定し、かつ、論文式試験を適正に行う視点から許容できる最大限度の受験者を選別するために、基礎的知識、法条の解釈及び理解を問うことを目的として実施されます。
試験科目(科目別出題数内訳):
・特許法(約17問)・実用新案法(約3問)
・意匠法(約10問)
・商標法(約10問)
・条約(約10問)
・著作権法(5問)
・不正競争防止法(5問)
試験時間:3.5時間
出題形式:5肢択一式、マークシートにて解答、出題数60問
合格ライン:6~6割5分程度
合格基準点:平成30年:39点/平成29年:39点/平成28年:39点
<論文式試験>
弁理士活動を行うに当たり、基礎的な法条の解釈及び理解力、判断力、論理的展開力、文章表現力等の総合的思考力を問うことを目的として実施されます。試験は、必須科目と選択科目に分けて行われます。
※論文式試験を受験するためには、その年の短答式試験に合格しているか、短答式試験の免除資格を有している必要があります。
試験科目/試験時間:
[必須科目(3科目)]
・特許法・実用新案法:2時間
・意匠法:1.5時間
・商標法:1.5時間
試験形式:論文式(特許法・実用新案法1問、意匠法1問、商標法1問)
[選択科目(1科目)] ※計6科目の中から1科目を願書提出時に選択する
・理工Ⅰ(機械・応用力学):1.5時間
・理工Ⅱ(数学・物理):1.5時間
・理工Ⅲ(化学):1.5時間
・理工Ⅳ(生物):1.5時間
・理工Ⅴ(情報):1.5時間
・法律(弁理士の業務に関する法律):1.5時間
試験形式:論文式
<口述試験>
論文式試験で確認された総合的思考力等に基づく、口述による説明力を問うことを目的として実施されます。筆記試験に合格した者に対して、口頭試問を行うものです。
※口述試験を受験するためには、その年の論文式試験に合格しているか、論文式試験の免除資格を有している必要があります。
試験科目:特許法・実用新案法、意匠法、商標法
試験形式:面接方式
試験時間:特許法・実用新案法、意匠法、商標法 それぞれ10分程度
※口述試験はあくまでも知的財産権に関する知識等について問うもので、面接試験ではありません。
試験対策について
【短答式試験】
試験は短答式・論文式の2段階選抜方式で実施されますが、短答式試験合格者は2年間短答式試験が免除されるため、
社会人でも限られた時間で戦略的に合格を目指すことができます。
また、平成28年度の試験から科目別に合格基準点が設けられ、総合点と共に各科目において、必要な点数を超えておく必要があります。これにより従来のように得意科目に特化した学習計画ではなく、出題される全ての科目において十分な対策を漏れなく行うことが必要となっています。
<合格基準点>平成30年:39点/平成29年:39点/平成28年:39点
【論文式試験】
合格するためには「必須科目」と「選択科目」の両方に合格する必要があります。ただし、論文式試験にも免除制度があります。
論文式試験の「必須科目」に一度合格すると、翌年と翌々年の2年間、論文式試験の必須科目が免除されます。論文式試験の「選択科目」は一度合格すると永続的に免除されます。
特に、「選択科目」には、多くの免除の条件が設定されていますので、確認が必要です。
(※)「選択科目」の免除となる「『選択科目』に関する研究により、修士、博士又は専門職の学位を有する方」については、工業所有権審議会での審査によって免除資格の認定を受ける必要があるため、試験前に特定の手続きが必要です。
弁理士試験スケジュール
願書出願:例年3月中旬から4月上旬頃
願書提出方法:郵送のみ
<短答式試験>
短答式試験日:5月中旬~下旬
受験地:東京、大阪、仙台、名古屋、福岡の5会場
短答式試験合格発表日:6月上旬頃
<論文式試験>
論文式試験日:
試験は、「必須科目」と「選択科目」について各1日ずつで行います。 なお、選択科目が免除される方は、1日で論文式試験が終了します。
[必須科目(3科目)] 6月下旬~7月上旬
受験地:東京、大阪の2会場
[選択科目(1科目)] 7月中旬~7月下旬
受験地:東京、大阪の2会場
論文式試験合格発表日:9月中旬頃
<口述試験>
口述試験日:10月中旬~下旬の指定された1日
受験地:東京の1会場
口述試験合格発表日:10月下旬~11月上旬頃
※各科目ごとに試験室が設けられ、受験生は1名ごとに各室を順次移動し、各室2名の試験官による10~15分程度の口頭試問が行われます。
※採点は、各室ごとに、A(良)、B(普通)、C(不十分)の3段階で評価され、C評価の科目が3科目中で2科目以上ないことが合格基準となります。
※弁理士試験に合格した後、日本弁理士会の実施する登録前研修に合格しなければ弁理士としての登録はできません。
どんな人が合格しているの?
受験者数は年々減少傾向にあります。一方で合格者数および合格率は、平成29年度から微増しており、下げ止まりの気配です。合格率が底を打ったことで、受験環境としては今後安定していくことが期待できます。
▼平成30年度弁理士試験の結果概要は?
志願者数 3,977人(前年度 4,352人)
受験者数 3,587人(前年度 3,912人)
受験率(受験者数/志願者数) 90.2%(前年度 89.9%)
合格者数 260人(前年度 255人)
合格率(合格者数/受験者数) 7.2%(前年度 6.5%)
合格者平均受験回数 3.8回(前年度 4.2回)
▼年齢別は?
20代: 16.5%、30代: 47.7%、40代: 26.5%、50代: 8.1%、60代: 1.2%
最年少20歳、最年長63歳
▼男女別は?
男性: 74.2%、女性: 25.8%
▼受験(免除)種別は?
短答受験者: 38.5%、短答試験免除者: 56.2%、筆記試験免除者: 2.3%、
工業所有権法免除者:3.1%
※工業所有権法免除者とは、短答試験のうち工業所有権(特許・実用新案・意匠・商標)に関する法令及び工業所有権に関する条約の試験科目、論文試験(必須科目)並びに口述試験について免除される者をいい、上記短答受験者・短答試験免除者・筆記試験免除者には含まない
[特許庁「平成30年度弁理士試験の結果」より]
▼試験ごとの合格率は?
短答式試験の合格率は、大幅に上昇傾向です。論文式試験の合格率は、比較的安定しています。口述試験の合格率は、例年高い合格率となっています。
<短答式試験>
平成29年度:8.9%
平成30年度:20.1%
<論文式試験>
平成29年度:24.2%
平成30年度:23.9%
<口述試験>
平成29年度:98.4%
平成30年度:97.0%
弁理士試験は、社会人の占める割合が非常に高く、およそ8割以上が社会人合格者です。(平成30年度弁理士試験合格者の社会人割合87.7%)このことからも、合格するために不可欠なのは、多くの時間をさくこと以上に、学習時間の効率化であるといえます。よって、多忙な社会人であっても、弁理士試験合格を目指すことは充分に可能です。
平成30年度弁理士試験の結果概要の詳細をみる(特許庁サイト)>>
※上記内容は、情報を保証するものではございません。日程が変更される場合もございますので、必ずご自身で各実施団体のホームページなどでご確認ください。